旦那のいいわけ
10月17日

ポケットの中には
私は背広は滅多に着ない。
普段の出勤はGパンにシャツを羽織り、お弁当の入ったリュックを背負って自転車で疾走していく。

そんな私でもたまの外出では背広姿になる。
月に一度あるかないかの頻度だが、革靴を履き、ネクタイを締め、黒いカバンを小脇に出かけていく。

うちの嫁は出来た嫁だ。

「ハンカチ持った?」

必ず玄関で問いかける。

ところで、私のハンカチに対する興味は甚だ薄い。
最近のトイレは大抵、ドライヤーが常設されているし、最悪の場合、風乾で全く差支えがない。
独身時代は、新品の背広の上着に突っ込み、毎回それを持ち歩いていた。当然、トイレでも食事でも使用はしないので、常に新しいハンカチを持っていられる。これは我ながら賢い。
(持っていないとさすがにまずい事があるので)

ところが、さすがに結婚するとそうもいかぬ。
ましてや嫁様のハンカチに対する執着心は、ネズミが持つひまわりの種に対するそれと同種に近いものがある。

「ハンカチ持った??」

その度にいい加減に答えていたところ、最近では嫁様は実力行使に出るようになった。

はっと気がつくと、上着の胸ポケットをハンカチ様が占拠している。
出かけようと靴を履いていると、カバンの隙間に新しいハンカチがそっと差し入れられる。

出来た嫁様だ。

彼女は私に真新しいハンカチを常に持たせようとする心がけを忘れない。



今日は、名古屋でお仕事だ。
私は背広を着込み、カバンを持って電車に乗る。


6枚のハンカチと一緒に。




そういえば、戻って洗濯機にハンカチ入れたこと無いのに気がついた2005年10月。
怒る顔が目に浮かぶので、戻ったら黙って洗濯機にいれとこっと。